一般の部
グランプリ
S.O.S/山口芽生
<審査委員長講評>
軍用払い下げ品と自身の産着という、なんともキッチュな出会いが魅惑的な世界に引き込んでくれます。厚手の透明ビニールが醸し出す独特な堅さを感じる質感は、シルエットをシャープに見せ、モノトーンベースの衣装に装飾された安全ピンやフック、吸盤、シャックルなどは、機能的ではない機能美とでもいうべきか? なんとも憎いトータルバランスの良さ、センスを感じさせます。一本筋が通っている、魅力的な作品です。
凖グランプリ
Sea Killer(海の殺し屋)/渡邊俊博
<審査委員長講評>
リサイクルの重要性を強く感じさせてくれる、メッセージ性の高い作品です。プラスチックが自然を汚染し、生物を滅ぼす「killer」であることを、海の清掃活動を日常的に行っている作者が皮肉たっぷりに教えてくれています。サメは生命感にあふれ躍動的なポーズです。腹面の白さと背面の黒地に有彩色の対比が美しく、随所に使われている部品には汚れや砂などが残されたままで、要素の全てが作品の力強さに結びついています。
優秀賞
目覚め/三代光
<審査委員長講評>
テープの種類や色の違い、幾層にも重なる繊細な構造を見ていると、内部に引き込まれそうな感覚を覚える作品です。素材である、作者が愛用していたテープには沢山の思い出が詰まっていることでしょう。長い時間をかけて情報の蓄積をしてきたテープと、その間作者自身が重ねた思い出の数々。その両方を感じることで時代や時間の流れを考えさせられます。
優秀賞
清流に命を繋ぐ/熊谷邦行
<審査委員長講評>
白一色でまとめたことで、命の尊さを強く感じさせる作品です。対象をよく観察し、計画的につくりあげている様子がうかがえます。とりわけ主たる素材が納豆パックであることに驚きました。単純な素材でも工夫次第で様々な表情を醸し出すことができ、このように「生」や「心」を宿らせる力があることに、改めてアートの奥深さを感じさせてくれます。
優秀賞
MOMINICATION揉みにケーション=MOMU揉む×COMMUNICATIONコミュニケーション/しょうじまさる
<審査委員長講評>
密度の高さが重量と共に力強さを感じさせる作品です。隣り合う本の組み合わせを考え、向きを工夫しながら折り曲げ、隙間なく造形することでその密度の高さが生まれています。作者は「本を手で揉む」という表現を用いていますが、本の情報や読んだ作者の想いが、地層や年輪
のように「時間」を抱き込み、作品に練り込まれているように感じます。
優秀賞
The earth pot ~過去も未来も変わらぬ地球(ほし)を願って~/石川晃子
<審査委員長講評>
色彩が鮮やかで凹凸も大きめの正面と、落ち着いた白が基調の背面の対比が美しい作品です。さらに内部の幾何学模様がつくり出す独特な渦は、まるで宇宙空間のようであり吸い込まれてしまいそうな美しさがあります。半年以上という長い時間をかけて制作しており、作者の意図する1000年後のフィクションは現実を帯びてくるようで、強いメッセージを感じました。
優秀賞
鉄の鱗/三田村祥
<審査委員長講評>
カメラや時計といった精密機械は、その機能を果たすためだけにつくられているにもかかわらず、あまりにも美しすぎる世界を有していることを再認識させてくれる作品です。時代にそぐわなくなったという理由で捨てられる運命だった部品達が、アートのために再び蘇りました。その姿は息をのむほど繊細で美しく、構成力の高さに感心させられる作品です。
高校生の部
グランプリ
Beautiful/小林美陽
<審査委員長講評>
チョコレートの包み紙を捨てるのが惜しいという気持ちに共感できます!そこで終らず、そこから何かをつくり出そうとしたエネルギーに感激です。構想3年、大小のハート形に折ったピースを用い、美しく見せるための工夫を重ねました。少ない色数にもかかわらず、特に顔の頬の部分の色合いの選択には努力の跡が見られます。作者自身がとても充実した楽しい3年間であったであろうことが、この作品の一番の価値に他なりません。
優秀賞
さみしがり/山本大香
<審査委員長講評>
レトロでアンティークな作風や作品名の「さみしがり」から、作者がイメージしている独特の世界観が垣間見られる作品です。和箪笥の金属パーツを手に入れたことをきっかけに、他の装飾素材と再構築していますが、そこでは作者が日常的に意識している感情と、無意識に手が先に動いて形をつくっていくような作業との協働があり、一つのロマンを感じます。
優秀賞
不死鳥と花/吉田志保
<審査委員長講評>
体をくねらせ、愛おしい目で包み込むように花を見つめる不死鳥。生まれ持って定められている生と死に、一種の哀れみを感じているようです。1枚ずつ色を変えて積層した羽が生命の強さを感じさせる不死鳥。古雑誌の過去や時間を、ありのままの姿をさらけ出すように無彩色で表現している花。その対比にはかなさを感じ、優しい気持ちにさせてくれる作品です。
優秀賞
カミコ・デラックス/京都先端科学大学附属高等学校クラブザンビア
<審査委員長講評>
「ペンを集めて巨大なペンをつくる」という発想に驚きました。確かに剣よりも強そうです!そのカラフルさが現代感を醸し出しており、古教科書や参考書などでつくられた、シンプルな色合いの手との対比が印象的です。世界で起きている学びの不均等に対して、まず疑問をもとうという姿勢、そして解決したいという想いが作品自体の勢いにそのまま表れています。
中学生の部
グランプリ
MILKY TOWN/札幌市立北辰中学校美術部
<審査委員長講評>
皆が肩を寄せ合って、心地よく暮らしている様が伝わってくるような温かみを感じる作品です。白色が基調になっていることで爽やかな雰囲気を醸し出し、円形の家々が段毎に浮いている構造が、空中回廊を思わせ魅力的です。シンプルに、地球の環境を守ることや持続可能な社会への変換を考えるきっかけになることを願ってつくられており、それをストレートに表現している点が鑑賞者にもわかりやすく、好感が持てます。
優秀賞
仮想空間模型/久米りりあ
<審査委員長講評>
シンプルな素材で、綿密克つ美しい表現が施されている点に目を奪われます。ランダムな太さや長さの新聞紙のとげで人々を表し、ランダムに糸でつなぐことで情報が駆け巡る現代社会を想像させます。インターネットに対しても、どこかチクチクとした感触を感じている作者のメッセージが伝わって来ます。コミュニケーションの大切さを考えさせられる作品です。
優秀賞
Hunting Trophy/中野翔子
<審査委員長講評>
丁寧な仕事に驚かされました。随所に工夫が見られ、試行錯誤を繰り返している作者の姿が目に浮かびます。生態系を守る決意から将来ハンターになることも志しているようですが、とても愛らしい鹿の目を見ていると、本当は殺生ではない形で解決する方法を見い出したいと思っている作者の気持ちが伝わって来て、少し悲しさも漂う作品に仕上がっています。
優秀賞
恐るべし排気ガスの生産者/かどわきんぐ お菓子の箱リサイクル課
<審査委員長講評>
独特な車の形と色で、まず楽しさが目に飛び込んで来ました。しかし、作品タイトルには「恐るべし排気ガスの生産者」とあり、気候変動に一石を投じる想いからつくられた作品であったことに驚かされました。お菓子の箱を主素材にしているため色彩は鮮やかで、その美しさとコンセプトのギャップが魅力となり、可愛いだけでなく強いメッセージを伝えてくれます。
小学生の部
グランプリ
海を見つめるペンギン/伊東雷胴(5年生)
<審査委員長講評>
どっしりとした、たくましいペンギンの形が威圧感すらかもし出していて魅力的です。足の力強さやお腹の緩やかな起伏などの造形がとてもしっかりしていて、よく観察したことがわかります。時間をかけて原寸大の大きさでつくったことも効果的だったと思います。地球温暖化による動物たちの悲しむ姿は見たくありません。責任も人間にあるけれど、一方で防ぐことができる力も人間にはあるはずだ!と強く思わせてくれる作品です。
優秀賞
自由を求めて/友森大地(6年生)
<審査委員長講評>
段ボールの素地の色と、白色の紙の素朴で繊細な色使いの対比が絶妙です。段ボールや紙もハサミで切るのではなく、手でちぎって1枚1枚を形づくっている点や、口元の優しさ、尾びれの繊細な表現にこだわりと愛情、そしてぬくもりを感じます。本から勢いよく飛び出すという発想に想像力がくすぐられ、躍動感が伝わってくる力強い作品です。
優秀賞
さっぽろテレビとう/佐藤羽瑠(1年生)
<審査委員長講評>
つい笑顔がこぼれるような、とても楽しいテレビ塔に心がなごみました。ほほえましいのは一番上のつくりが人の顔のように見えてしまうからでしょうか?今にもしゃべり出しそうです。作者が工夫をしたという足の部分の他にも、割り箸で構造的につくられているエレベーターや、がっちりとした各フロアーの表現が全体の形をうまく引き締めているけっ作です。
優秀賞
リサイクル キューブ 〜 遊び方は一つじゃない!〜/森吉亮介(6年生)
<審査委員長講評>
各面の色が工夫に満ちていることと、その巨大さに驚きました。さらに、ただ箱を重ねているのではなく、内部の構造までもがきちんとルービックキューブを再現しており、可動する構造になっていることには脱帽です。遊び方は一つじゃないというタイトルは、行程そのものを遊びとし興味を造形活動に発展させていて、ものづくりの源点を感じさせてくれます。
審査員特別賞
永井賞
やせたかば / 野島 康佑 (小学2年生)
<永井博 講評>
かば好きにはたまらないのどっしりとした感じがとても良い。愛らしい表情もかわいい。
菅原賞
海からの5gプラ・メッセージボトル/金井中学・桜美林大学 海洋プラごみデザインメッセージ チーム(11名)
<菅原一剛 講評>
ぼくたちが暮らすこの世界にとって、とても大切なメッセージが、光と共に届けられるかのようなこの作品には、世代を受け継ぐという大きなメッセージも含まれているからこその、あたたかさを感じることが出来ます。またそんな大切なことが、美しいと感じることが出来るすがたで存在していることにより、未来を前向きに捉えることが出来ます。もしかしたら、そんな未来を作っていくことこそが、ぼくたちにとっても大きな責任のひとつなのかもしれませんね。そして最後に、世代を越えた、まさに光ある作品をありがとうごさいました。
三浦賞
サメくん / 嘉奈 優成 (小学2年生)
<三浦啓子 講評>
一目みて、この作品に引き込まれました。
その後コンセプトを読み、そうだこれはリサイクルアートであり、そしてそれは作者が着ていた服だったんだという、そのストーリーにも愛おしさを感じました。
サイズが合わなくなり、服という役割を終えた布たちが、サメくんとして生まれ変わり、ヒラヒラとこれから先の時間も泳いで行ってほしいです。
作者が大人になった時には、このサメくんは布の重なりだけではなく、時間の重なりも伝えてくれるものになっていると思います。
正面顔がとてもよいです。
引地賞
ウルチラマン/亀谷 健太 (小学6年生)
<引地幸生 講評>
お家で貯まったチラシから生まれた「ウルチラマン」。小学生らしさ溢れたシンプルな発想の作品ですが、ウルトラマンのポーズや体全体のバランスが、まるで立体アニメのように今にも動き出しそうに仕上がっていてとても気になる作品でした。右足に重心がかかったポーズがなんとも言えない印象。特に後ろから見た立ち姿が可愛らしかったですね。