最終審査結果発表

2023年10月27日(金)~29日(日)に開催されました「第9回リサイクルアート展」の最終審査結果発表と作品講評をお伝えします。

一般の部

グランプリ

OCEAN by BICYCLE/巴 雅人

<審査委員長講評>
「自転車や車椅子の部品をよく観察し、作られた加工技術の高さに敬意をはらい、元の形状をなるべく崩さず、形の面白さをなるべく活かして再構成して海洋生物にした」とのこと。あそび心でファルコン号がコッソリ居るところなど、作品に向かう気持ちの温かさが感じられました。たぐいまれな観察力と、試行錯誤を通して表現に工夫を凝らす忍耐力が生み出した作品です。


凖グランプリ

未来の役者たち/渡邊 俊博

<審査委員長講評>
見せ方がシンプルかつ美しく、海岸清掃活動で見つけた物を「可愛いい」「個性があり語りかけてくる」「汚れや傷さえも愛着が湧く」とコメントしています。一つ一つにラベルが貼られ、生態や魅力度、なんと将来の夢まで書き込まれており、鑑賞者の観察力とリサイクル意識までもが問われます。まるで「人間がゴミと呼んでいるだけで、ゴミという物質はない」と訴えているようです。
 


優秀賞

Sleeping Dog 寝ている犬/ひゅばとちゃう

<審査委員長講評>
コンセプトは「眠っている犬たちの平和な気持ちは、私たちが望むバランスの取れた平和な環境と同じ気持ち」と言う事ですが、ほとんど段ボールだけで作られているその小さな命は、でき映えが凄すぎです。素材の扱いから細やかかつ大胆な表現方法までに彫刻的造形力の高さが見受けられ、この作品だけは到底マネができないと感じました。できればお持ち帰りしたい愛おしさを感じます。
 


優秀賞

天馬 牛乳パックだって空を飛びたい/玉桜AKE

<審査委員長講評>
アイデア、着眼点が優れて居ると感じた作品です。難解な技法とアイデアと言える、牛乳パックを長さ140ミリ、幅32ミリに切った、自称「紙ブロック」紙片一種類のみでブロックの様に組む技法を生みだし、それを650枚使ってペガサスを作り上げていると言うことです。圧倒されるのですが、何より凄いのはその技術的なすごさを感じさせない、優しい見え方になっている点です。


優秀賞

年輪の宇宙/林 誉之

<審査委員長講評>
ほとんど廃タイヤだけにもかかわらず多彩な表現を生み出しており、すごく丁寧に時間をかけて愛情を持って作り上げています。素材の扱いは魔術師としか言い様がないくらい精巧かつ斬新で、色も綺麗です。さらに「宇宙や地球の公転、自然の循環を感じるような大木の年輪を表現した」と言うのですから、どこからそれらの発想が生まれてくるのか? 驚きが連続する作品です。


優秀賞

avatar/多賀 直

<審査委員長講評>
制作技術面が非常に優れていると言える作品です。抜きん出た造形力もさることながらこの作者の最大の強みは「漆」を使う技術を有していることです。日本の伝統的な技法を用いながら新たに廃棄物という素材に目を向けることで、改めて「漆」という自然由来の素材に対して敬意を払い、両者が融合して時代を切り開く造形の可能性を感じさせてくれます。圧倒的な力強い作品です。


優秀賞

きばんを纏う/名古屋学芸大学 産業廃棄物ファッションチーム(7名)

<審査委員長講評>
衣服には到底なり得る事が想像できない電子基板という素材をあえて取り入れることで、素材には無限の力が秘められていると言うことを示唆してくれています。廃棄物にもう一度スポットライトを当てるために「リサイクルをお酒落とすると言う観点から、身に纏えるドレスに仕立てた」と言うことでしたが、電子基板等に含まれる希少金属が、お洒落に一役買っているように感じます。


高校生の部

グランプリ

ヒューマンコロ/京都先端科学大学附属高等学校 クラブザンビア(6名)

<審査委員長講評>
「電子部品を素材としたデジタル甲虫」と「イタチ類の動物の毛などを主たる素材としたアナログ球」を対比させる事で、異質な効果が生まれることを期待して制作したとコメントされていました。接着剤にも動物由来の「膠」を利用するなど、細部にわたりこだわりがあり、人工、自然、などに想いを巡らせ、素材そのものが持っている強さや可能性を改めて考えさせてくれる作品です。


優秀賞

円/久米 りりあ

<審査委員長講評>
「当たり前の生活が永遠に続き、円満な人生を送れますように」という願いから「円」というタイトルに結びついたようです。気持ちをいかに穏やかにして人生を送る事ができるかと言う、いわば生き方の究極を形で表現するという極めて難しい事にチャレンジしています。円を様々な角度から分析して考え、単純なのにその魅力は非常に多い事を分析し、アピールしている点が印象的です。


優秀賞

翼に向日葵をのせて・・・この地から世界へ/淺野 雅博

<審査委員長講評>
作者が積極的に行っている、介護施設でのボランティア活動を通した様々な想いから「どんな時も、一輪の花を届ける気持ちを持ち続け、SOSを発信している世界中の誰かの心に寄り添える活動を続けていきたい」という強い考えが、強さの中に優しさが見える作品を生み出してくれています。扱った材料の多さもさることながら、扱いが細やかで、制作者のエネルギーを感じる作品です。


優秀賞

大根/二瓶 優生

<審査委員長講評>
「たくさんの人に見て、笑って、楽しんでもらえるように、わかりやすく、かつ不思議で引き込まれるような作品を目指した」と言うことです。ダンボールに工夫を凝らして素材の新しい姿を見いだし、表現を工夫しています。その結果、大変力強い作品に仕上がりました。「素材」という、実はリサイクルの原点を考えさせてくれる点に着目している事が印象的でした。


中学生の部

グランプリ

繁栄と滅亡 /淺野 友理佳

<審査委員長講評>
現在の地球環境を危惧して、皆を「とにかく自分たちが立ち上がらなければいけない」と言う気持ちにさせてくれる作品です。人間と恐竜とが同じ末路を迎えてしまわないのかとても心配ということで、衰退して、絶滅していく恐竜が何かを訴えている様子を作ってくれました。強い躍動感とともにその悲痛な叫びが、繊細さを持ちつつも荒々しく大胆な表現から強く伝わってきます。


優秀賞

Hope for the future ~救えるのは私たち~/赤井川中学校 文化部(7名)

<審査委員長講評>
「マイクロプラスチックによる汚染で苦しんでいるクジラ」と「ゴミの無い明るい未来を目指そうとする都市」を表現し、人間が対策を練り、何か行動を起こさない限り海洋汚染は止めることができないと訴えてくれています。言葉では言い表せない程の、強い想いを感じながら制作に取り組んでいるグループ8人の姿が想像できる、力強い作品です。


優秀賞

僕のもう一つの顔/竹嶋 義生 

<審査委員長講評>
「普段の自分とは全然違う自分をイメージして作った」と、中学生の時期らしいとも言えるコメントがされていました。この年代は「自己」という存在を改めて強く認識するようになり、将来を含め何か方向性を考え始め、模索している時期だと思いますが、その葛藤を形に表そうと試行錯誤している様子がうかがえます。渦巻いている感情が見事に表現されている作品です。


優秀賞

こうしちゃいられない/友森 大地

<審査委員長講評>
地球温暖化に焦点を当て、「なまけもの」の動きがゆっくりなのは、実は環境に優しい省エネな生き方をしているからと考え、だからこそ人間はもっとスピードをあげて対策をしなくてはいけないと言うことを、精巧な作りを通して訴えてくれています。皆が、私たちを取り巻く様々な現在の環境を考えなければいけないという気持ちにさせてくれる、メッセージ性の強い作品です。


小学生の部

グランプリ

リサイクルプラスチック軽量ロボット/青田 宗一郎(4年生)

<審査委員長講評>
まさに典型的なプラスチック素材を、そのままの姿で使ってくれました。容器の形をうまく活用したとアピールしているように、最小限の材料でその軽やかさや透明感が表現されている点がとても魅力的で、未来の新しいロボットを感じさせてくれます。到底大人にはできない作りで、このような見方、考え方ができる純粋さに拍手です。見る人を素直な気持ちにさせてくれる作品です。


優秀賞

生きた化石/相馬 曜(4年生)

<審査委員長講評>
「カッコよさ」をテーマとした作品です。生きた化石とよばれているシーラカンスの「生きているかっこよさ」と「化石の骨のかっこよさ」の両方を表現したそうですが、半身ずつこの2つを対比させるという、思いもつかない表現方法に驚きました。観察する事が大切で、その結果を「考え」と結びつけることで沢山の発想や表現を生むことができると言うことを教えてくれました。


優秀賞

ごみをたべたにじいろのうみ/樽美 成(2年生)

<審査委員長講評>
「アート」よりも「リサイクル」という事を強く意識させてくれる点が素晴らしい作品です。部屋一杯に海で拾って来た素材を広げ、囲まれながら制作している姿に心打たれました。「1番大変だったことは、ごみを洗うことです。何日も洗いました。」と言う本人のコメントには涙が出てしまう思いです。色も綺麗で、とても楽しい気持ちにさせてくれる姿に生まれ変わりました。


優秀賞

おしゃれな大きな魚/中瀬 千壽(2年生)

<審査委員長講評>
今回の受賞者中最年少さんですが、とてもしっかり作ってある作品です。「しっぽが三日月の、おしゃれなかわいい魚をつくりました」というコメントそのものがかわいいですね。強そうなのにとてもかわいく、カラフルなところが素敵です。目指そうとするものが「かわいさ」であるという、そのような気持ちが作品を作る時にはとても大切だと言うことを、改めて感じさせてくれます。


審査員特別賞

永井賞

rejected phantom/田村陸


菅原賞

ゴミコレ吹上浜2023_B(個別作品名1、人と海の協働/2、優しいプラスチック/3、S.O.S.S(Spark off Slack SDGs))/ゴミコレプロジェクト


三浦賞

竜/大熊馨(小学4年生)


引地賞

会話が生まれる鞄/MACKEY