審査委員長講評
リサイクルアート展2020 審査委員長 村瀬千樫
今年は新型コロナウイルスの災禍の影響で本リサイクルアート展の開催が危ぶまれました。しかし、時期は半年ほどずれましたが例年通り開催されましたことは本当に喜ばしい限りです。
本「リサイクルアート展」は株式会社マテックが2015年、創業80周年を記念してはじまり、今年で6回目となります。「使用しなくなったもの、廃棄物、不用物など」を利用し、芸術的、文化的価値のある造形作品として再び生まれ変わらせ発表する場でありますが、それと同時に広くリサイクルの重要性を知っていただき、さらなる循環型社会を目指すもの、未来につながり光りある方向に進んでいこうとするものであります。日本の文化の向上や芸術教育の充実のため、継続して本アート展を開催されておりますことに、私たち美術教育に関わる者として、心から敬意を表しつつ、審査の講評をさせていただきます。
さて、今回の作品全体の特徴としては、まず本アート展の時期がずれたことや学校の一斉休校、その後の授業時数の確保等による子供たちの自由時間の減少などの影響からか、小・中・高等学校からの応募数が昨年比で50点以上少なく、また、例年より時間をかけて地道に努力したと思われる作品が少なかったことは大変残念でありました。それに比ベ一般の応募数が例年より逆に50点ほど増えたことは、本リサイクルアート展が全国的に大きな話題となっているなど、日本中に浸透している表れだと感じています。それは応募の状況が道内130点余り、道外がその倍の250点余りであることや、応募者の年齢が7歳から81歳までと年齢層の広がりが強く感じられることなどからも分かります。
今年はビニール袋が有料化になるなど、リサイクルヘの関心がより身近に迫ってきたことなどから、昨年にも増してプラスチックを素材とした作品が多かったこと、また、廃材などをあまり加工せず、そのまま素材を生かしたもの が多く見られました。いずれにしてもごく生活に密着した素材を絵画や彫刻、デザイン、工芸的などジャンルをまたいで世の中にリサイクルの重要性を訴えたものが多かったです。これは例年言えることですが、じっくりと時間をかけ て制作したと思われるものと、やや完成度に荒さがみられるものなどとの差が感じられました。しかし、いずれの作品も本リサイクルアート展のねらいであります「未来社会に豊かな環境を引継ぐことへの啓発となる展覧会とする」という、メッセージを伝えているものであったと思います。
第一次審査はイラストレーター、写真家、デザイナーなどプロのアーティストの方々と大学を含めた美術教育関係者など5名の審査員が公正を期すため、地域や個人情報などはすべて削除した作品概要と写真による審査を部門ごとに行いました。
その審査方法としては、小中、高校生の部門は発想力や表現力、技術力のほか製作に対する努力などを5段階で評価し、合計点数の高い順から4点選びました。特に小学生の場合、造形の発達の状況がその学年にふさわしいか どうかも 考えさせていただきました。一般の部門は発想力や表現力、技術力のほか、リサイクルに対するメッセージ性などを加え、同様に点数の高い順に7点を選びました。なお昨年同様、多くの方々が応募されたということで、一つでも多くの賞をあげたいという4人の審査員の方々の思いをかなえるため「審査員賞」を設けました。
第二次審査では実際に応募された作品をみながら厳正に審査させていただきました。審査方法は第一次審査と同様に、各審査員の合計点数の多い順にならべ、決めさせていただきました。
今年も例年通り、廃棄物や素材を十分吟味し、一人一人それぞれの独自な感性でリサイクルアートとして造形表現されており、特に環境問題を啓発する内 容や未来へのメッセージ性の強い作品がそろっています。段ボールやビニールなど素朴な素材を用いた絵画的な作品や彫刻的な作品、テーマは人物や動植物、魚など具象的なものから抽象形体まで、幅広く身近な生活の中から発想し、追究したものが多かったと言えます。
一般の部
グランプリ
Earth Fish/Furihata Mika(長野県)
<審査委員長講評>
3500枚以上の新聞紙で鱗をつくり、身近な希少生物であるメダカをイメージした造形作品とのこと。彩色せずに新聞紙やプラスチック容器のカラ一部分を活用し、見事に重量感のある美しい色彩の魚へと変身させている点を評価します。また、形も魚のリアルさをよく表現しており、観る人に心地好さをもたら すとともに、様々なイメージを湧き上がらせる作 品となっています。
<作品コンセプト>
現在、地球には絶滅の恐れがある美しい生き物が沢山います。そこで、リサイクルをはじめとする環境保全の大切さと生き物の尊さを表現するために、身近な生き物であり絶滅危惧種のメダカをイメージしながら制作しました。大きさはメダカの約40倍です。
段ボールを鱗型にかたどり、鱗一枚一枚に新聞紙のカラー部分だけを切り抜いて貼りつけました。魚の内側は空洞になっており、口からは内側を覗き込めるようになっています。
地球上の雄大な自然がいつまでも守られていきますように、という願いを込めて「Earth Fish」と名づけました。
<アピールポイント>
魚の制作に絵の具は一切使用しておらず、新聞紙のカラー部分の色でグラデーションをつけています。新聞紙には絵の具を絶妙な配合で混ぜたような色が沢山あり、インクの資源も活用したいと思いました。
およそ3530枚の鱗には、季節の草花や空、虫や鳥など自然の生き物たちがいます。作品全体で四季を表現しているので、季節の移り変わりや美しさを感じていただけたら幸いです。
<使用素材>
●段ボール ●新聞紙(写真部分の著作権は新聞社へ連絡し、使用許可をいただいています。) ●タピオカの入っていたプラスチック容器 ●木材の端切れ
凖グランプリ
敷物にされたツギハギTIGER/classicdraw(東京都)
<審査委員長講評>
400枚の着古した布をそのまま生かして縫い合わせ、絶滅の危機にある希少動物であるトラを表現し、環境保全の重要性を訴えたとのこと。ユーモラスな 中にも形や色の絶妙な配置が美しい造形作品となっています。素材そのものを効果的に生かし、ツギハギの中にも統一感とバランスがある魅力をもったリサイクル作品と言えます。
<作品コンセプト>
日本には布のはぎれを繋ぎ重ねてつくる「襤褸(ぼろ)」という文化があります。木綿などの布が貴重だった頃、人は布をとても大切にしてきました。着物の穴が開いた箇所にはあて布を縫ったりハギレを繋ぎ合わせたりして、一つの着物を代々受け継いで大切に使ってきた歴史があります。この作品は、襤褸の精神でもある「ものを大切にする」という心を表現する為に、着古したTシャツとバンダナの400枚におよぶハギレを縫い合わせて制作しています。
また、モチーフであるトラは、紙や木材などを取る為に生息地である森林を奪われ、密猟被害もあって絶滅危惧種となっています。今あるものに感謝し、限られた資源を大切にしていくことでこれからの地球と私たちの未来が明るいものになればと願います。
<アピールポイント>
古布に色を塗ったり、染めたりすることなく、あえてTシャツとバンダナそのままのプリントとカラーを活かして制作しました。裏側にはカーテンを使い、体の中綿には羽毛布団を使っています。作品名には、漢字・ひらがな・カタカナ・英語を使うことでツギハギのコントラストを表現しています。虎の顔は不満を抱えたなんともいえないチャーミングな表情をしており、見る者に訴えかけます。ファストファッションの出現により衣服を安価に手に入れることが出来るようになった反面、世界中で年間228億点もの売れ残った服が廃棄されているといいます。野生の虎においては、昔にいた10万頭が今はおよそ3000頭まで減少してしまいました。この作品がこれからの地球のことを考えるきっかけになれば嬉しいです。
<使用素材>
●古布のハギレ(Tシャツ、バンダナ、サテン生地、フェルト) ●羽毛布団 ●カーテン ●クッションの中綿 ●フローリングタイルの端材 ●木材の端材 ●緩衝材 ●針金
優秀賞
ゴム自動車/金谷 繁寿・吉田 稀一(北海道)
<審査委員長講評>
段ボールやペットボトルなどの廃材を活用して、誰しもが楽しめるゴムの動カの自動車を作ろうとした作品とのこと。作者自身、わくわくしながら制作したことが想像できるほど、様々な素材を効果的に、造形的に構成し、ダイナミックで魅力あるリサイクルアートとして完成させています。まさに観る人にものづくりの楽しさやリサイクルアートヘの関心が湧く作品となっています。
<作品コンセプト>
『子供から大人まで、誰もが楽しめる』がコンセプト。子供の頃に皆が作ったであろう何かしらの動く工作をもとに、大きなゴム動力自動車を製作しました。作り込みすいないことで、見てくれた人が一目でどのような素材をどのようにして作ったのかがわかるようにしてあります。『これだったら僕でも、私でも作れるかも』と、この作品を通してものづくり、リサイクルへの興味関心につながれば幸いです。
<アピールポイント>
ゴム動力を用いることにより車を走らせることができます。また、電気でヘッドライトやテールランプを光らせることができます。
<使用素材>
●ダンボール ●スキーストック ●新聞紙 ●ペットボトル ●紙箱 ●缶 ●ゴムチューブ ●ガムテープ ●割り箸 ●銀紙 ●ペットペーパー芯
優秀賞
希望の扉/大熊 紹詮(埼玉県)
<審査委員長講評>
台風という災害により廃材となった木材やドアノブ、プラケットなどで扉を つくり、その扉の向こうに未来を感じるようなあざやかな色彩を用いての造形作品。活用した様々な形や色の素材に自然復活や生活の中の希望という意味を持たせるなど物語を感じさせ、まさに将来への幸せの光を感じさせる表現となっています。
<作品コンセプト>
2019年日本列島を襲った令和元年房総半島台風で被害を受けた友人がいました。新居となるはずの家は倒壊しましたが、かろうじて無傷で出てきたドアノブとブラケット(棚受)。そして瓦礫となってしまった泥だらけの廃材を友人から作品に使えないかと渡されたのが制作のきっかけとなりました。2020年になってから猛威を振るうコロナや自然災害のなかで、みなさん生活の中に少しでもほほえましい希望の持てるような作品をコンセプトに製作を行ないました。
<アピールポイント>
希望の扉の外枠部分は、台風で廃材となった木材の泥を洗流し太陽の力で木材本来の姿を吹き返してもらいました。自然復活を願って木材に、大地の黒・木々の緑・水のブルー・空のコバルト・雲の白のイメージを彩色しました、彩色後に巻きつけた凧糸を切り離すことよって自然がよみがえることをイメージに仕上げました。
木枠のダイヤカット(古布の帯地金銀)は復興のための経済をイメージしています。
使い古した竹箒の竹・古紙・古布・水引(金銀)をコラージュしたパーツは鳥をイメージしました。古くなったクリスマスリースからは赤い実を希望として表現、広島ビーズの赤は生活の中に希望の光を届けることができるように太陽の光をイメージしました。
葉脈は人へのやさしさを表現しています。鳥たちは風(金糸・銀糸)に乗って希望の赤い実を世界に届け地球が平和に戻り生活の中に純白の花を咲くことを願いしました。作品は両面アクリル板で素通しになっています。希望の扉の前にお立ちになった方が扉の向こうに希望の何かを感じとっていただけたら制作者の私もほんの少し幸せです。
<使用素材>
●倒壊した家の廃材(扉・ドアノブ・ブラケット) ●京都北の天満宮骨董市で買い求めた(金糸・銀糸・広島ビーズ・帯・古布・古紙) ●お祝いでいただいた金風の水引(金銀) ●古くなったクリスマスリースから赤い球 ●レースカーテンから切り取った花 ●お盆に使ったホオズキの葉脈
優秀賞
昔の玩具店/竹津 昇(北海道)
<審査委員長講評>
プラモデルや雑誌、段ボールなどを活用して、なつかしい古びた玩具店の雰囲気を見事に表現しています。特に様々な空き箱を効果的に用いて、形の構成のバランスや色彩の変化、ハーモニーを醸し出しており、絵画的にも魅力ある リサイクルアート作品となっています。
<作品コンセプト>
段ボールを積層に重ね、扉の材質感や凹凸を表現した。
空き箱などを利用して、玩具店の雑多な品揃えを表現しようと思った。
<アピールポイント>
プラモデルやモデルガンの空き箱のラベルがまるで、玩具店に積み重なっているように見えます。
鑑賞者は、まるで玩具店の店先に立っているような感覚になります。
<使用素材>
●雑誌やポスターなどの切り抜き ●プラモデルなどの空き箱 ●木材 ●アクリル絵の具
優秀賞
明日を紡ぐ/工藤 時生(東京都)
<審査委員長講評>
長さにすると15kmにもなるという古糸をすべて手で巻くことで織るという制作のプロセスを経て、この世には存在しない不思議な魅力をもった造形作品としてよみがえらせていると思います。製糸工場で廃棄された様々な美しい糸を巧みに童ね合わせ、独特の世界を作り出しており、再生への光をも感じる作品となっています。
<作品コンセプト>
僕の生まれた群馬県桐生市は奈良時代から織物の産地として知られている「繊維の街」である。近年では産業が衰退し、織物の工場は減り製糸工場ではたくさんの綺麗な糸な布が未使用のまま、劣化するなどして捨てられてしまっている。今回はその残糸や残布を用いて制作を行なった。
きめ細やかな糸と布は繊維業を営む実家での幼いころの記憶を想起させ、抽象的なフォルムは生活の中での人々の非言語的な関わりの形そのものを私たちに問いかける。
この作品を通して糸という産業廃棄物はアートにリサイクルされることで、歴史や地域の特徴を独自の表現やメッセージとして紡ぎ出す。そしてそれが出会いを生む一つの機会になることを望む。
<アピールポイント>
長さにして15kmになる糸を全て手で巻くことで織るとは別の造形的なアプローチをした。
居場所のないままだったその糸たちが不規則に何百、何千にも重なることで生み出される表情は深い奥行きと強度を感じさせ絵画的な空気感があるとともに、どこか刹那的でもある。
<使用素材>
●残糸 ●残布 ●段ボール
優秀賞
雨のち晴れ/Pulltarbar(福岡県)
<審査委員長講評>
プルタブや物千しの廃材を用いて、フロアライトをつくり、出品後はボラン ティア団体に寄付できるよう安全に配慮しようとしたというその発想が素晴らしいと思います。ゴミとなるプルタブを巧みに組み合わせ、色鮮やかなフロアライトとしてよみがえらせ、しかも実際に活用できるようにした点は大いに評価できます。まさにリサイクルで人々の心を和ませ、福祉の充実する社会を啓発する造形作品となっています。
<作品コンセプト>
世界はパンデミックに襲われました。
毎日嫌と言うほど耳にする感染者数。行きたい場所に行けない、やりたいこともできない、会いたい人に会えない。堂々とできていたことができなくなり、こんな日が来るとは思ってもいませんでした。
しかし、「やまない雨はない」という言葉があるように、ずっとこの状況が続くことはないはずです。
この作品は主にプルタブ、使っていない傘と壊れた洗濯物干しを利用してフロアライトを作りました。
プルタブの隙間から溢れる小さな光にこの先の明るい未来の兆しを想像し、たくさんの方が笑顔を取り戻せる日々がくることを願い作成しました。
<アピールポイント>
私たちは、いつでも、どこでも、綺麗で美味しい飲み物を飲むことができます。しかし、世界中には、水でさえ簡単には飲めない人々がたくさん存在しています。
全国からプルタブやアルミ缶を集めているボランティア団体にプルタブを寄付する事で車椅子と交換できたり、収益金の一部を日本国内や海外の災害支援、難民支援活動、発展途上国にはワクチンなどを送ることができます。
プルタブで、世界中の多くの人々を救うことが出来るのです。
しかし、車椅子到達までには約160万枚のプルタブが必要なため相当な時間と労力が必要とされます。
そこでプルタブでアート作品を作成し楽しみなからプルタブを集めるようになりました。
ゴミになるはずだったプルタブに再び命を吹き込んみ今回はフロアライトとして新たなモノを作成しました。
ライトとしての役目を果たした後はボランティアに寄付できるよう、接着剤などを使わずに構成にしました。
<使用素材>
●プルタブ ●傘 ●洗濯物干しの脚 ●毛糸 ●ザル ●結束バンド ●針金 ●チェーン ●ライト
高校生の部
グランプリ
綺麗な世界の代償/
北海道札幌稲雲高等学校美術部(16名/北海道)
<審査委員長講評>
目に見える美しい世界と目には見えない汚れた世界を空想の生物を使って同時に表現し、自然環境の重要性をアピールしたかった作品とのこと。段ボールや空き缶など様々な廃品の役割を生かしながらメッセージ性の強い、ダイナミ ックな造 形作品となっています。作品をより良くしようとお互いに地球温暖化などリサイクルにかかわる様々な問題点を議論しながら洗い出し、形や色を工夫して表現に結び付け、質を向上させていったことがわかる作品となっています。
<作品コンセプト>
世界にはたくさんの綺麗な街があります。この生き物の口の中にある街もその1つです。そんな綺麗な世界を作る裏側を知っていますか。たくさんの自然が汚れ、たくさんのゴミが出ている世界です。あなたには綺麗な世界しか見えていないかもしれません。少しでもいいので、汚い世界に目を向けてください。実は、その2つの世界は紙一重だったという事に気付くでしょう。
<アピールポイント>
ゴミが散乱している所は極端に汚くみせるため、日常にありふれた空き缶やお菓子の包装などを使い、逆に街は綺麗にみせるため、キラキラしたものを所々に散らばせ、ライトアップもしました。この生き物の毛並みはゴミが散乱し汚くなるにつれて、荒くなるように新聞紙、スズランテープを用いました。出来る限りの草木を生い茂らせることで、この生き物とは対照的に自然を強調して地球温暖化を表しました。
<使用素材>
●ダンボール ●新聞紙 ●紙 ●キャンバス ●木材 ●空き缶 ●お菓子の包装 ●ペットボトル ●ビン ●照明器具 ●鉛筆 ●机 ●ビーズ ●マドラー ●鏡 ●鎖 ●ホッチキスの芯 ●スポンジ ●スズランテープ ●ビニール袋 ●造花 ●両面テープ
優秀賞
ラグビー/田中 勇(3年生/東京都)
<審査委員長講評>
作者のラグビーを見た感動から、そのラグビー場を作りたいと思い、いろいろ工夫しながら、たくさんのトイレットペーパーや使い捨ての素材を用いて造形的に表現している点が評価できます。シンプルな形や色の繰り返しで光と影の効果を考えながら美しく、魅力的な造形作品として完成させています。
<作品コンセプト>
私はラグビーW杯を見てとても感動しラグビー場を作ってみたいなと思い作りました。構造自体とてもシンプルですがシンプルにすることで形、光などとても綺麗に仕上げることが出来たかなと思います。
<アピールポイント>
アピールポイントはラグビー場の壁360度をトイレットペーパー の芯で覆われています。家にはトイレットペーパー の芯が沢山ありどうにか使えないかなと思った際に思いつきました。また、光の加減により様々な影ができ、こんな環境でプレーが出来たら気持ちがいいなと思えるような自慢のできるフィールドです。
<使用素材>
●トイレットペーパーの芯 ●包装されていた段ボール ●焼き鳥の串 ●ボンド ●ボールペン
優秀賞
心の中の「霧のむこうのふしぎな町」/
土屋 凜(1年生/北海道)
<審査委員長講評>
物語を読んで心の中に残っている夢や希望のイメージを、段ボールやプラスチックの素材を用いて造形的に表現したいという作者の気持ちが芸術の始まりとして重要で評価できます。意識下の自己を目に見える形で次々と造形化していく喜びが感じられる作品となっています。様々な廃材を活用して現実の世界と異なる世界に、形や色の変化を付けながらいざなう造形は魅力的であります。
<作品コンセプト>
小さいときに読んだ柏葉幸子さんの「霧のむこうのふしぎな町」という物語は、今でも私の心の中に残っています。大好きなお話です。主人公の女の子が、霧に包まれた山の中をさ迷い歩いていると、ふとコンコンと、石畳を歩いていることに気が付きます。霧の谷へようこそ!そこには不思議な世界が広がっているのです。霧の谷へ足を踏み入れたリナのつもりになって、ワクワク感も持って、霧の谷の町を作りました。ミニチュアハウスの中に夢と希望を詰め込んで。
<アピールポイント>
ダンボールや厚紙を使い、展開図を描き、平面から家を組み立てていきました。窓も透明のプラスチックをはめ込んでいます。芝生には糸くずを用いて、ふわふわとした質感を出しています。石畳を通り、一番奥まった所にあるピコット屋敷にたどり着くには、左右にある不思議な家々を眺めつつ、不安と期待で胸をいっぱいにしながら歩いてゆくのです。そのような気持ちを持って作りました。
<使用素材>
●ダンボール ●空き箱 ●つまようじ ●針金 ●透明プラスチック容器 ●糸くず ●紙粘土 ●ボンド ●絵の具 ●ニス ●マジック
優秀賞
Reclaiming Newspapers into Trees/
荒木 大和(2年生/群馬県)
<審査委員長講評>
人々の思いや日常が切り取られている新聞紙を素材として、元の姿の木に再生し、リサイクルを促すシンボルにしたいという願いで制作したという作品。 その願いが通じてか素朴で不思議な魅力を醸し出しています。地元の神社の御神木をモチーフとしたとのことで造形的にもどっしりした存在感と枝や葉がシュレッダーで刻まれた紙という面白い造形となっています。
<作品コンセプト>
毎日届く新聞紙には人々の思いや日常が切り取られている。それを材料とし、元の姿の木に再生することによって形にし、リサイクルを促すシンボルとした。
<アピールポイント>
シュレッターで刻まれた新聞紙が複雑に絡み合って予測不能な色や模様が面白く仕上がった。地元の神社の御神木をモチーフに作成したので立派に真っ直ぐしていて格好いい。
<使用素材>
●新聞紙 ●ダンボール
中学生の部
グランプリ
アオイちゃん2号/
東千歳中学校文化部(4名/北海道)
<審査委員長講評>
廃材を使って自分たちの仲間の一人をモデルにして、アンドロイドロボットを作ろうとした発想がおもしろく、時代の先端を歩いている感じがします。パソコンなど様々な素材を活用して工夫を重ね、魅力的なロボットとなっています。背景の構成など形や色のバランスもよく、造形的に完成させている点が評価できます。
<作品コンセプト>
1年生の蒼依をモデルに「アオイちゃん2号」を想定して作りました。アンドロイドロボットですが、「取り扱い説明書」を作りました。少し人間くさい特徴やリサイクルに対する警告と啓発も含んだものとなっています。モデル本人のほうがかわいいです。
<アピールポイント>
大きな段ボールは自動車のリサイクルパーツの段ボールを使用し、字を残しました。胸やお腹の扉を開けると、ディスプレイや基盤が見えるようになっています。また、取り扱い説明や主要諸元表も貼ってあります。膝には、リチウムイオン電池やハードディスクが埋め込まれていて、クリアファイルの透明シートから透けて見えます。
<使用素材>
●雑誌の切り抜き ●段ボール ●PC基盤 ●PCキーボード ●PCハードディスクなど、 ●釣り用のヘッドライト(ゴムバンドが痛んだので本体を使用) ●アクリル絵の具 ●木材 ●結束バンド
優秀賞
BEAUTIFUL NOW/
利岡 光樹(1年生/石川県)
<審査委員長講評>
ハンガーをはじめ、古布やコード、しゃもじなど使わなくなったものを素材 に、鹿の大きな角を造形作品にしようと発想したところがユニークで評価できます。様々な廃材が巧みに構成され、組み立てられており、それらが新しい鹿の表情を出し、造形的に興味をひく作品となっています。
<作品コンセプト>
使われなくなった物も、また美しく輝くようになる。
<アピールポイント>
ハンガーと布を使い、鹿の大きな角を表現。捨てようとした様々な物を使い、鹿の顔を制作。
<使用素材>
●ハンガー ●古布 ●コード ●テレビカバー ●しゃもじ ●プラスチック製品 ●針金
優秀賞
ガラスの靴/
戸川 茉奈美(1年生/北海道)
<審査委員長講評>
履けなくなった靴をみて、物語に出てくるガラスの靴をつくりたいという、造形表現への発想、これは身近な廃材をアートとして生まれ変わらせるという本リサイクルアート展のねらいそのもので評価できます。いらなくなったCD-Rを活用して虹色の美しく、魅力的な造形作品と変身させています。また、針金を蝶の形に工夫したのも美しさを強調しています。
<作品コンセプト>
見た人が、大好きなシンデレラのお話の中に出てくるガラスの靴をイメージできるように作る。
<アピールポイント>
小さくなってはけなくなった靴に、いらなくなったCD-Rを小さく切って虹色に輝くガラスの靴を再現したところ。もう一点は針金を蝶の形にしてレジンで色付けしたところ。
<使用素材>
●CD ●粘土 ●レジン ●ほうさ ●絵具 ●針金
優秀賞
木/上村 胡太郎(3年生/北海道)
<審査委員長講評>
シュレッダーされた紙や廃木材を使って、木から紙、紙から植林による豊かな森林を存続させるという木の循環をイメージして、その願いを制作した点が 高く評価できます。細かく刻まれた紙の面が微妙なマチェール(画肌)となり、色彩は未来に続く豊かさを象徴している感じです。
<作品コンセプト>
廃木材をつなぎ合わせ、そのうえにシュレッダーされた紙を何層も重ねて、木を絵の具で描きました。木を木材にし、紙にし、使用し、廃棄するだけで終わらせずに、地球の将来を考え、植林をすることで長いスパンではあっても、木を循環させ、豊かな森林をいつまでも存続させてほしいという願いを込めて制作しました。
<アピールポイント>
廃木材をつなげたことでユニークな形の画面を作ることが出来ました。シュレッダーされた紙を何層にも重ねたので画面がぎっしり紙で埋まっています。
<使用素材>
●廃木材 ●シュレッダーされた紙 ●アクリル ●油彩 ●木工ボンド
小学生の部
グランプリ
CKM(コロナ・キラー・モンスター)/
竹嶋 義生(4年生/北海道)
<審査委員長講評>
現在、世界中を苦しめている新型コロナウイルスを倒す怪獣を作りたいという、つまり世の中をよくしたいという発想が純粋で頼もしいと思います。恐竜や怪獣が好きで特撮や洋画に興味を持つという自分の特性を最大に生かし、薬を出して守ったり、口から炎を出したり工夫している点、また、プラスチック等、形や色彩を造形的に活用するなど、魅力的な造形作品となっています。
<作品コンセプト>
新型コロナウイルスをたおす怪獣を作りたかった。
<アピールポイント>
ぼくは、恐竜、怪獣が好きなので休校中や夏休み怪獣を作ろうと思った。背中に、消毒ジェルなどのシールを貼り、感染したくない人には背中の薬のタンクから薬をだし守ることができる。コロナウイルスを発見したら口から出す炎によりウイルスをたおす。
<使用素材>
●古紙 ●プラスチック
優秀賞
ずっといっしょひまわり/
宮代 紗菜(6年生)・陽菜(3年生)(北海道)
<審査委員長講評>
小3の妹と二人で家の庭に咲いたヒマワリをずっと残して、咲かしておきたいという動機、発想が自分の夢や願いをかなえる造形として小学生らしく素晴らしいです。ペットボトルのふたやカップ麺の容器など様々な廃材を活用し、造形的で美しい作品としているところが評価できます。幼稚園のひまわりぐみの妹がとてもうれしそうで、なでたり、背比べしているなども微笑ましく、身近なリサイクルアートとなっています。
<作品コンセプト>
今年の夏、家の庭に種をまいたひまわりが、きれいに咲きました。ようちえんのひまわり組の妹は「ひまわりぐみのひまわり~」ととてもうれしそうで、ひまわりをなでたり、せを比べたりしていました。ずっとひまわりが咲いていたらいいなと思って作りました。
<アピールポイント>
気に入っているところは2つあります。まず、花びら、葉、くきの部分です。野菜と花の写真がのっているカタログを切り抜いて、貼り付けました。たくさんはっていくのは楽しかったです。もう一つは、種の部分です。のみものについているストローを短く切って1本ずつはりました。細かいストローをはるのは大変だったけれど、きれいにできたと思います。
<使用素材>
●ダンボール ●ペットボトルのふた ●カップめんの容器 ●アイスクリームのカップ ●ラップの芯 ●ストロー ●カタログ ●バラン
優秀賞
ちっちゃなわたしのユキヒョウ「ユキタ」/
小田嶋 千佳(3年生/北海道)
<審査委員長講評>
希少動物である雪ひょうの赤ちゃんをみて、一緒に暮らしたいと思うほどかわいく、自分で作ってそばに置こうとした表現の動機は、小学生らしく、その思いが結実した造形作品となっています。また、首をまわるようにしたり、しっぽを動かせるようにした、その独自の工夫も高く評価したいと思います。
<作品コンセプト>
テレビでユキヒョウの赤ちゃんを見ました。とてもかわいくて毎日いっしょにくらしたいと思いました。でも「き少動物」なのでできません。だからユキヒョウの赤ちゃんを作り「ユキタ」という名前をつけました。
<アピールポイント>
1、首がまわるように中にラップのしんを入れて作りました。
2、しっぽがまがるようにはりがねにペットボトルのキャップをとおしました。
3、むねのスタイのような毛をそろえました。
<使用素材>
●ダンボール ●ラップのしん ●ペットボトルのキャップ ●ゴムひも
優秀賞
にじのアーチ/
小林 岳(1年生/北海道)
<審査委員長講評>
たまごパックを素材にして「にじのアーチ」をつくろうとする発想が素晴らしいと思います。全体が色彩の微妙な変化であるグラディエーションを生かしたにじの形の美しいアーチとなっています。雨のしずくが揺れる点なども工夫していますし、高さや幅などの大きさも適切で小学1年生らしいリサイクルの造形となっています。
<作品コンセプト>
たまごパックを組み立ててにじを表現しました。すだれのように雨のしずくが揺れます。
<アピールポイント>
たまごパックでにじのアーチをつくりました。色が変わっていくのがキレイなので、下から見上げたり上から見たりいろんな角度からみてほしいです。色画用紙でたくさん円錐をつくったり、たまごパックに貼るのがたいへんだったけど、色が変わっていく(グラデーション)がうまくできたと思います。にじのアーチをくぐると、すだれ状の雨のしずくがゆらゆら揺れてきれいです。くぐってみたいと思ってもらえるとうれしいです。
<使用素材>
●たまごパック ●ペットボトル
審査員特別賞
永井賞
自己虫/石橋 幸大
<永井博 講評>
この作品を見たとき、子供の頃の夏休みの昆虫採集を思い出した。セミの抜け殻をあつめたりしたことなど、これは蜂の抜け殻?ちょっとリアルな感じがいいと思いました。大きな動物より小さい昆虫を作るというところがいいですね。
<作品コンセプト>
制作中に作業場に迷い込んできてしまった蜂を捕まえ、逃そうと試みるも刺されることを恐れ、そのまま容器の中から出すことができずに2日経ち、蜂は息絶えてしまった。その後、祖母の死を経て、その蜂の死が私の自己中心的な考えで招かれてしまったと考え直し、その蜂が生きていた証としてこの作品を制作しました。
<アピールポイント>
ペットボトルや汚れて買い替えられたデスクマットなどの透明な素材を使うことで、蜂を捕まえた容器が見えるようにして蜂の命を奪ってしまったことを忘れないようにしたところです。
<使用素材>
●キアシナガバチの死骸 ●廃材(ペットボトル、紙筒、デスクマット、針金) ●ガムテープ ●グルー ●テグス
菅原賞
秋輪(しゅうりん)/林 誉之
<菅原一剛 講評>
現在、ぼくたちの日々の生活の中で、欠かすことの出来ない存在となった自動車たち。そんな自動車たちも、やがて寿命を迎えます。そしてそのひとつの役目を終えたホイールを母体とした部品たちが、タイトルにもあるように紅葉を纏ったあたたかい光と共に、もう一度、まさに「再生」するそのすがたは、その眼差しと共に、とても美しいと感じました。
<作品コンセプト>
私の日々の業務の中で発生しリサイクルに出す廃プラスチックのなかに、割れて交換されたテールランプやウインカーのレンズがあります。部品としては機能しなくなったランプのレンズですが、排出当事者としてその特性を生かした創作活動を行い、自分達の立場から資源の行く末を改めて考えるきっかけになればと考えました。自動車やオートバイ、農機や重機にも使われるランプ類は、被視認性を考えた意匠としてレンズカットが施され光を様々な角度から認識出来るように作られています。私達も、モノを多様な視点から観察することで廃品に新たな光を見出せるのではないかと思います。赤く染まり秋の終わりを告げ、役目を終えたように見える木々の葉が実は豊かな土壌となり次の命を育むように、持続可能な社会に想いを馳せて、大きな循環をイメージしたホイール内に紅葉を表現しました。
<アピールポイント>
躯体には、スケール感を出すため100万キロ以上、のべ数十万トンの物資を輸送してきた大型トラックの廃品ホイールを用いました。細かく切ったテール・ウインカーレンズに奥行きをもたせて、視点を移していったときに光が絶えず変化していくよう配置しました。コンセプトに説得力を持たせるために、我々の生活と安全を支えてきた工業製品の廃材の特性と質感を生かしたまま、有機的な美しさを持たせることを目標としました。
<使用素材>
●廃プラスチックレンズ ●廃スチールホイール ●台風害で壊れた看板の部材(アルミ複合版・スチール丸棒) ●廃ブレーキディスク ●カバーが破損したシーリングライト
三浦賞
①「水の花」②「それぞれのメッセージ」(フォトフレ-ム9点ワンセット)/松尾 あい子
<三浦啓子 講評>
それは、何かの一部だったもの、本体から外れて目的をもたなくなったもの。作者は、捨てられず貯めておく癖があるらしい。リサイクルという言葉は、別の有効『利用』を意味することが多いが、役割をもたなくなった破片たちに、利用ではなく価値を見出そうとした視線に惹かれました。新たな価値をつけるというのは、見過ごしていた価値を改めてみつめなおし、愛しさをみつけることなのかもしれない。
<作品コンセプト>
捨てる物の素材と形そのものに愛おしいと感じるかを考える。
<アピールポイント>
①白Tシャツからジーンズの洗濯。時間のプロセスを重視していても大きさの違う花が出来てしまう。なんとも愛しい。洗濯、すすぎ、脱水、昔の洗濯機が壊れると、もう作れません。(笑)
②私がもったいない精神で捨てずに貯め置きました。一つ一つ無言のメッセージを感じています。 和紙も茹でた筍の皮で手漉きしました。
<使用素材>
①/●竹紙 ●コットン
②/●竹紙 ●アルミ缶 ●クリップ ●プラスチック ●ビーズ ●紙コップ ●端皮
引地賞
捨てないで/kralik
<引地幸生 講評>
この作品はメッセージ性の強い作品で、一次審査の段階から目を引くとても印象に残る作品でした。作者が「捨てないで」というタイトルとともに、虐待され捨てられた犬の悲しい表情と姿を古布で表現し、意図する内容をみごとに作品としてカタチにされています。リサイクルアート作品として応募された作品ですが、命の大切さや動物愛護の大切さをこの作品を通して私たちに伝えてくれました。
<作品コンセプト>
本来捨てられるはずのチラシと古布で、虐待され、捨てられた犬を製作。
<アピールポイント>
全身から溢れ出す悲しみをボロボロになった古布でわかりやすく表現。子供達が小さな命を考えるきっかけになれば。
<使用素材>
●チラシ ●古布