2024年10月25日(金)~27日(日)に開催されました「第10回リサイクルアート展」の最終審査結果発表と作品講評をお伝えします。
一般の部
グランプリ
reborn / マスダカルシ
<審査委員長講評>
「生命誕生、再生を表現した」ということですが、リサイクルとは思えない程、美しく仕上がっています。一つ一つは違うキャラクターなのに統一性が高く、全てが仲間に感じられるのは、デザイン力に加えて空間のバランス力の高さ故だと思います。透明なアクリルに挟めることで、裏から本来の姿を見ることができ、その緻密さ、丁寧さを改めて感じ、又違う味わいが楽しめる作品です。
凖グランプリ
カサボネヒマワリ / 三代光
<審査委員長講評>
「壊れてしまった傘の骨で輪郭を作り、折れたり錆びたりしている部分はそのまま使用した」とのことです。緻密な計画を立てて作られており、様々な素材を盛り込んで、見え方に工夫が凝らされていて、とりわけバックライトで綺麗に浮かび上がる花の中心部分と、ステンドグラス風に取り囲むように表現された、背景部分の工夫は目を見張るものがある作品です。
優秀賞
〝Voyage of thee vening wind〟 / 奥田祥吾
<審査委員長講評>
「真夜中に夜風を感じながら、異国の地へと航海を始めようと、不安と期待な心もちで船出を待つ情景を、コラージュで表現している」とのことです。生地の色や形、かすれ具合や凹凸などをうまく利用して、とても自然で、居心地が良いと感じる美しさが魅力です。古紙で巻かれた額や、熱して不思議な形にしたペットボトルの蓋など、素材の扱い方にうまさが光る作品です。
優秀賞
Power to live / 武田享恵
<審査委員長講評>
「資源の循環の歯車。環境の循環の歯車。全ての生物の命を繋いでいく歯車。それぞれの巨大な歯車を回す、静かでとてつもない大きな力、エネルギーをイメージして制作された作品」ということです。優れた技術に支えられた制作で、素材本来が持つ魅力を引き出しています。重厚なたたずまいが、エネルギーの強大さをにじみ出している作品です。
優秀賞
Make a Wish / 張凱儀(ちょん ほいい)
<審査委員長講評>
タイトルの「Make a Wish」は「夢を追いかけること」と言う意味だそうです。身近な素材を用いながらも、日常生活には見ることのない組み合わせの空間を構成しています。全ての物質のミニマムな形状である「丸」という形に着目して、その形や色合いから醸し出される柔らかな優しい雰囲気が、唯一無二な存在感を放っている作品です。
優秀賞
仲間 / 樋口光一
<審査委員長講評>
作者のコメントには「生きているのに捨てられた」、「生き返るロボット達の勇姿」などの表現があります。捨てられていた素材でも、実は生命を持っているというようなことを、訴えたかったのではないかと思わせます。仲間だけど、個々には何か想いを持って存在している姿が印象的で、愛らしさと同時に寂しさも感じられる作品です。
優秀賞
HOUZ゛AI−人をパック詰めする。そして包み包まれる− / nao
<審査委員長講評>
「ごく身近なゴミに目を向けたい」と思い、「全て食品が入っていた包材のみを使用した」とのことです。コンビニの買い物袋が有料化されたことは記憶に新しいにも関わらず、相変わらず多量のプラスチックが使い続けられている現状をシンプルに訴えています。人間を中に入れてパック詰めするという皮肉も込められた、スッキリした見え方が特徴の作品です。
高校生の部
※審査員による審査の結果、優秀賞以上の作品は3作品となりました。
グランプリ
Change / 久米りりあ
<審査委員長講評>
「作品を置いた空間の雰囲気が、ガラっと変化するようなインパクトのある作品」を目指し、「かわいらしさがありつつも、不思議で独特な雰囲気を持った作品に仕上げた」とのことでした。確かに非常に強いインパクトを放っています。とりわけぶつかり合うような2色だけの色使いが独特すぎて、世界のゴミ問題にもつながる、危機感とも取れる毒々しさが感じられる作品です。
優秀賞
新聞紙張子の狐面 / 山本麻緒
<審査委員長講評>
張子のお面が新聞だけで作られており、「新聞の文字の大きさで印象を変えることと、色や写真がついている記事で柄(がら)を作ること」にこだわったそうです。何かを言いたそうに口をとがらせ、目だけがのぞく表情が神秘的に感じます。お面がとてもかっちりと丁寧に作られている点と、カラフルな紐が、異世界と現代を繋いでいるような作品です。
優秀賞
Hunger / クラブザンビア(京都先端科学大学附属高校)
<審査委員長講評>
地球温暖化を少しでも食い止めるために、国際的に進んでいる「脱プラスチック」。そのプラスチックが素材であるハンガー(hanger)と、飢え、(hunger)を感じるクマたちに着目して作り、「シロクマ」と「クロクマ」をモチーフとした作品です。ハンガーだけで組み上げた難しさが想像でき、怖いほどの迫力が伝わってくる作品です。
中学生の部
グランプリ
ぼくらを助けて!! / 友森大地
<審査委員長講評>
「私たち人間と共存する全ての生き物たちが、安全で安心できる未来を守っていかなくてはいけない」という思いから作られた作品です。碁盤の目の様に表現された、マンホールの蓋でしょうか? 切り文字で助けを訴えるメッセージなどが読み取れ、効果的に環境問題を訴えています。ラッコのかわいらしくも緻密な表現から、切なさが伝わってきます。
優秀賞
アーバンフォックス〜ゴミを食べるキタキツネ〜 / 小樽市立望洋台中学校文化部
<審査委員長講評>
都会に住みついた「アーバンフォックス」が近年増加し問題になっていると聞いたことが、題材のきっかけだそうです。すべて家庭ゴミで、こすったり、剥がしたりなど、様々な扱いで都会の情景が表現されていて、見れば見るほど味わい深いです。「共存していく為に何ができるのか、多くの人に考えてもらいたい」という思いが込められている作品です。
優秀賞
やどちゃん / やどちゃんズ
<審査委員長講評>
「人間が残してきたゴミを背負って生きてきたヤドカリ」とのことで、「どれだけゴミに侵されているのか」を表したと言うことです。そう聞くと怖いけれど、目を見ると、結構笑ってしまうユニークな表情に、ついゴミであることを忘れてしまいそうになります。赤一色の体と、カラフルな頭との大胆な対比が、迫力満点な作品です。
優秀賞
明るい未来へ~問いかける動物たち~ / 赤井川中学校文化部
<審査委員長講評>
自然破壊、環境問題による私たちの未来への不安や恐れを感じ、「私たちが行動を起こさなければ明るい未来は来ない」。そんな思いを込めた作品ということです。非常に豊かな表現を多用して、絶滅危俱種達のフィールドを作ってくれました。新聞紙のままなど、沈んだ、バランスの良い色合いで統一したことで、表現したかった寂しさが伝わってくる作品です。
小学生の部
グランプリ
ビーチプール / 小川咲(3年生)
<審査委員長講評>
とても楽しく、かわいらしい作品です。魚が入って売られていたトレーを再利用して魚に変身させるという、大人にとっては皮肉に感じるけれど、本人は本当にこんなプールがあったらいいなと思って作っていたのだと思います。実はこの中にもドラマがあって、「魚に食べられる魚が居る」のだそうです。皆さんも探してみてください。
優秀賞
プチプチマンのへんしん / 樽美成(3年生)
<審査委員長講評>
部屋一杯を材料と絵の具だらけにして作っている制作中の写真も送ってくれました。変身前の弱そうなプチプチだけの姿と、変身して強くなったかっこいいヒーロー。そのギャップが面白すぎます。特に変身後の後ろ姿はかっこよさを通り越して、なんて素敵なポーズでしょう。ものづくりへの取り組み、のめり込み方がすごい作品です。
優秀賞
漂流53ブラザーズ / 宮脇幾生(4年生)
<審査委員長講評>
漂流物のゴミを調べることで、他の国と海を通して繋がっていることを感じ、「私たちがもしゴミを海に流したら、他の国の誰かがそれを片付けることになるのだから、世界中みんながゴミを捨てる方法を考えなければいけない」と訴えています。2体は兄弟という設定で、おどけた、とても楽しそうともとれる表情が心に残る、ユニークな作品です。
優秀賞
国産牛乳100%さっぽろテレビ塔 / 中村駿文(3年生)
<審査委員長講評>
ご存じ札幌テレビ塔ですが「国産牛乳パック100%で作られている」という点が、おかしくも、楽しいポイントで、とても純粋な気持ちが伝わってきます。小学2年生でここまで細かい作業をこなす集中力には驚きです。時計の数字には、テレビ塔の誕生日1957年8月24日と高さ147mを入れたそうで、なんとも凝った演出が憎い作品です。
審査員特別賞
永井賞
脳 / 森岡賢一
<永井博講評>
基盤と配線を使って複雑な脳をみごとに表現している。情報量の多い令和時代の縮図ともいえる作品だ。
菅原賞
お花畑のドレス / 北野博美
<菅原一剛講評>
思わずリカちゃん人形に着せてみたくなるような可愛らしい佇まいのするリサイクルドレス。きっとタイトルのようにお花畑の中に立たせたならば、キラキラと輝くのでしょうね。
三浦賞
無題 / 飯田大空
引地賞
Kuma / 八木正宏
<引地幸生講評>
廃材の鉄筋やスチールの空き缶、運搬用の木製パレットで創られた「Kuma」は、劣化した素材の風合いを見事に活かした作品でした。北海道らしいシンプルなテーマでありながら、「Kuma」の顔を愛らしく表現しながらも、鉄筋の網で捕らえられたような表現で「Kuma」の悲しみや憂いさも感じられる、僕自身とてもこころを動かされた素敵な作品でした。