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2017 受賞作品|審査員特別賞

游ぐ(オヨグ)
AKIKO MIZUMA

主な使用素材
着物地、八掛、長襦袢、スーツ裏地、ワンピース裏地、カーテン生地、ボディは靴下

作品コンセプト
母の古い着物地、ワンピースの裏地、スーツの裏地等の整理する事になった古布を使い和の伝統工芸つまみ細工の技法を用い錦鯉を作成いたしました。本作品を通してお伝えしたいのは伝統的に生活の中でモノを再利用してきた日本女性の姿です。母はいつも家のモノを修繕したり古いモノを使い子供の服や人形を作ったりとよく手を動かす女性でした。失敗作も多くありましたが生み出すモノ全てに母なりの工夫が入り、ユーモアに溢れた数々のモノが我家に彩りを添え笑いを生みました。手作業の折に『これでモノを活かした!』と嬉しそうに口癖の様に言っていたのを懐かしく思い出します。その姿は幼い私にはとても愉しそうに見えました。それはモノを大切に最後まで使う達成感なのか、再生したモノの出来栄えに対しての満足感なのか、新しく再生したもので皆を喜ばせた幸福感なのか、はたまた家計を一人支えていた父への思いなのか…。母亡き今では定かではありませんが、その姿は家庭を保守した古き良き母親として、また家庭生活の中にいつも何かしらの小さな愉しみを見出していた魅力的な一女性として、私の脳裏に焼きついています。リサイクルは常に『手間』と結びついています。ただポイと捨てるよりも必ず何かしらの手間と時間がかかるのがリサイクル。人は誰かを、何かを想う時におのづから『手間』をかけるのではないでしょうか。その想いから生まれるリサイクルはその過程まで含めとても愉しい。この様な一人一人の小さな心の集合体が地球を想い愛しむ大きな流れを産む母なる源流となる事。その流れの中を、日々の小さな『手間』を愉しみながら、華やに、そして巧みに泳いでゆく日本の女性達の過去、現在、未来の姿を想いながら夜な夜な手仕事にて本作品を制作いたしました。

アピールポイント
舞妓の花かんざし等をつくるつまみ細工の技法を用いて作りました。つまみ細工は正方形の布切れを折り紙の様にたたんで作ります。今回使った最小のピースは8mm四方でピンセットを使い折りあげていきました。布は洗って色抜きした後に糊付けして使いました。期限切れのチークやアイシャドウそして食紅を使い色付けしたものもあります。つまみ細工は江戸時代から作られて来たもので、発祥は定かではありませんが、宮中の女官達が余り布で花を作り出したのがその始まりと伝わっています。今では職人も少なくなり、七五三や成人式、結婚式などの限られた機会にしか目にしないものかと思います。私は子供の頃に祖母からつまみ細工を習いました。作り方は祖母の母が女学校の家庭科の授業で習い、それを祖母に伝えたそうです。昔は多くの女性が身につけていた技術だったと聞きました。
今回応募させていただいたのは、昔は当たり前の技術が廃れて行く中、皆様に少しでもつまみ細工について知っていただく機会をつくれたら良いなと思ったからです。

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