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2017 受賞作品|審査員特別賞

border / edge(ボーダー / エッジ)
上前 功夫

主な使用素材
廃ブラウン管再生ガラスカレット

作品コンセプト
ガラスという素材で、立体造形作品を制作しています。アート化する工芸、という言葉が俄に世間を賑わしていますが、アート化する為に作品を制作している訳でもなく、だからといって、工芸的な、技術や素材へ依ることも無く、ただ純粋に、美しいと思うような形を作ることと、自分の作り出した作品が、人々の生活の一部にあるような、そんな仕事をしたいと常々、思っています。近作では、制作に廃ブラウン管ガラスを利用しています。工業用ガラスは一般的にリサイクルが難しく、多くが廃棄されると粉砕され、埋め立てに利用されます。しかし、視点を変えると、工業製品として、厳しい規格と品質テストを乗り越えた非常に美しい素材です。数年でしたが、リサイクルガラスの焼成試験の仕事に関わる事で、様々な工業用ガラスと出会いました。その中でも特に美しかったのがブラウン管でした。試行錯誤と実験を繰り返す中で、作品へと転化できるようになりました。ガラスで作品を作る事は、非常に無駄の多い世界です。熔解炉の火は常に絶やす事無く、ガラスを熔かし、器を作る。鋳造に使う石膏は、一度窯に入れたら、全てゴミとなる。資源とエネルギーを大量に消費しながら、作品を産み出していく事に、少しながらの疑問を持ち出していた時でした。一度は廃棄された素材が、自分の手を通して造形作品となり、そして、人々の生活の一部へ還っていく事。これも命の循環のひとつと言えるかもしれない。私の産み出した作品が、建築や、開かれた空間の中で活き、人々の生活の一部となってくれるなら、それは、この上ない、幸せな事なのではないかと考えるようになりました。それが、今の私の目標であり、目指している所です。

アピールポイント
ガラス素材の一断面として、再生ブラウン管ガラスカレットを鋳造した際に産まれる複雑なガラス内部の表情を捉えています。その光の反射や屈折による、美しいガラスの表情を最大限に活かす為、様々なガラス造形の技術を組み合わせ、確かな造形力と高いガラス工芸の技術で立体表現をしています。

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2017