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2018 受賞作品|一般の部|優秀賞

阿難陀と私、それぞれの方法(アーナンダトワタシ、ソレゾレノホウホウ)
柳川 眞美恵

主な使用素材
ラジオ、電卓、時計、ヘアピン、プラスチック部品、クリップ、バックル、ビス、釘、アクセサリー、ビーズ、チェーン、タイル、おはじき、ボタン、リングプル、他

作品コンセプト
この作品に書かれているのは、お釈迦様の弟子、アーナンダというお坊さんの逸話です。
内容(和訳)は、《ある時、コーサンビー国に赴いた阿難陀はウデーナ王の花園の辺りで王の侍女たちに法を説き、教えに感動した侍女等は阿難陀に五百枚の衣を布施して王の元に帰った。これを聞いて、王は500枚という余りの多さに驚き、それを平然と受け取った阿難陀の真意を質そうと、彼の許にやって来た。「阿難陀尊者よ、かくの如き多くの法衣を何にお使いになるのか。」「大王よ、衣が古くなり、傷んだ物を着ている比丘【=ビク(僧)】たちに分かち与えるのです。」「では、その古い法衣は。」「大王よ、それは枕の袋として用いるのです。」「では、その古い枕の袋は。」「大王よ、それはよく洗ってベッドカバーにします。」「ではその古いベッドカバーは」「大王よ、敷物に用います。」 「では、その古い敷物は。」「大王よ、足拭きの布に作り直して用います。」「では、その古い足拭きの布は。」「大王よ、雑巾にして使います。」「では、その古い雑巾は。」「大王よ、これをよく叩いて、泥に混ぜて、地床を塗るのに使います。」これを聞いたウデーナ王は、お釈迦さまの弟子たちが全ての物の命を尊び、最後まで生かして使い切ることに深い感動を覚え、さらに五百枚の布を布施されたと伝えられている》この文章(画像あり)を漢字(中国語)にして作品にしました。作品に漢字を用いたのは、漢字が大好き!という、私の個人的な好みです。アーナンダはこのように物を最後まで活かしきる、リサイクルの方法を実践していたと伝えられています。私は捨てられる物を使って、今回この作品を作りました。後ろにぼんやり見える写真は、家電の廃棄風景です。

アピールポイント
壊れたラジオや電卓、娘が捨てて行ったアクセサリー類、いつ入手したのか分からない小さなタイル、おはじき、クリップ、ヘアピン、工具箱の隅にあるビス類などなど、引き出しの隅っこにひっそり眠っていて、多分いずれは捨てられてしまう小さな道具たちに、集合をかけ、枯れた剪定枝を加え、文字を作って行きました。眠っていた小さな道具たちは、まさか文字にされるとは! だったと思いますが、そのユニークな形から、「文字になる所」を見つけ、マッチングして行きました。作業は、難しく根気のいる作業でしたが、とても楽しい作業でもありました。

審査員 講評
家の中にあったゴミや枯れ枝を使って、ものを最後まで活かしきる、そのようなリサイクルの方法を実践していたと伝えられる仏教のアーナンダというお坊さんの逸話を造形表現した発想とメッセージ性、表現力は見事だといえます。
ぼかした家電の廃棄された写真を背景に用い、文字は捨てられていたクリップやヘアピン、ビス、クギなど、様々な道具で表しており、根気よく、リサイクルの理念を造形として表現しようとした努力も評価したいと思います。

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